帝王の殻 ~神林長平~
火星シリーズ第2弾です。 シリーズ1作目「あなたの魂に安らぎあれ」が、早川書房SFノヴェルズで1983年1月に刊行。 本書シリーズ2作目「帝王の殻」が、中央公論社から1990年2月に刊行なので、当時のファンは7年もの間、待っていたんですね。 文庫で、続けて読み返せるのは、幸せですね~。 地球人と月人の戦いの後、火星の地下で眠りについている地球人たち。火星に住んでいる人間は、独自の社会を構築していた。 火星ではひとりが一個、銀色のボール状のパーソナル人工脳PABをもっている。 秋沙(あいさ)能研は、情報の根幹であるアイサネット(ネットワーク)と、PAB(パーソナル人工頭脳)を生産し、火星を支配する巨大企業である。企業の長、秋沙享臣は、帝王とよばれた。息子の恒巧は、帝王を嫌っていて、芸術家(絵描き)となっていたが、やがて父のもとに帰り、孫が生まれる。 しかし、孫の真人は、まったく言葉を喋ろうとしない子供だった。そして、帝王が死ぬと、すべての財産をこの孫に与えるという、遺言だけが残されていた。 ところが、アイサネットを制御する機械知性アイサックが稼働した日、真人は突然話し出す。 私が帝王であると… 「魂」とは何か? 父と子・孫の間にある、もっとも身近にいる「他人」の間に流れる「親子関係」、「親子の絆」とは…何度読んでも、なかなか解読しきれないです。感性としては、共感しきり…なんですけどね。 また、最初に読んだ時は、まだ自分の息子は5歳ちょっと前、ちょうど真人と同じくらいの歳の時に読みました。 その息子も、もうすぐ17歳になります。 親子の絆とか、考えている事とか…父と息子って、理解できそうで出来ない物です。 理解できそう…というのが幻想なのでは無いか…と、沈思黙考してしまう作品です。 でも、物語は娯楽性に富んでいて、無駄が無いプロット・飽きがこなく、読みやすい文章・すっきりしたキャラクター像と、何度読んでも面白い傑作ですよ。 さあ、次ははじめて読む「膚(はだえ)の下」(上・下)です。 長い~、ぶ厚い~。楽しみで~す。