帝王の殻 ~神林長平~

帝王の殻

イメージ 1

早川書房 ハヤカワ文庫JA JA-524 JAカ-3-16 
1995年9月10日印刷 1995年9月15日発行
定価680円(本体660円)

火星シリーズ第2弾です。
シリーズ1作目「あなたの魂に安らぎあれ」が、早川書房SFノヴェルズで1983年1月に刊行。
本書シリーズ2作目「帝王の殻」が、中央公論社から1990年2月に刊行なので、当時のファンは7年もの間、待っていたんですね。
文庫で、続けて読み返せるのは、幸せですね~。

地球人と月人の戦いの後、火星の地下で眠りについている地球人たち。火星に住んでいる人間は、独自の社会を構築していた。
火星ではひとりが一個、銀色のボール状のパーソナル人工脳PABをもっている。
秋沙(あいさ)能研は、情報の根幹であるアイサネット(ネットワーク)と、PAB(パーソナル人工頭脳)を生産し、火星を支配する巨大企業である。企業の長、秋沙享臣は、帝王とよばれた。息子の恒巧は、帝王を嫌っていて、芸術家(絵描き)となっていたが、やがて父のもとに帰り、孫が生まれる。
しかし、孫の真人は、まったく言葉を喋ろうとしない子供だった。そして、帝王が死ぬと、すべての財産をこの孫に与えるという、遺言だけが残されていた。
ところが、アイサネットを制御する機械知性アイサックが稼働した日、真人は突然話し出す。
私が帝王であると…

「魂」とは何か?
父と子・孫の間にある、もっとも身近にいる「他人」の間に流れる「親子関係」、「親子の絆」とは…何度読んでも、なかなか解読しきれないです。感性としては、共感しきり…なんですけどね。
また、最初に読んだ時は、まだ自分の息子は5歳ちょっと前、ちょうど真人と同じくらいの歳の時に読みました。
その息子も、もうすぐ17歳になります。
親子の絆とか、考えている事とか…父と息子って、理解できそうで出来ない物です。
理解できそう…というのが幻想なのでは無いか…と、沈思黙考してしまう作品です。

でも、物語は娯楽性に富んでいて、無駄が無いプロット・飽きがこなく、読みやすい文章・すっきりしたキャラクター像と、何度読んでも面白い傑作ですよ。

さあ、次ははじめて読む「膚(はだえ)の下」(上・下)です。
長い~、ぶ厚い~。楽しみで~す。