100,000年後の安全

 この映画は、フィンランドに建設中の、原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場"オンカロ(隠された場所)"と呼ばれる施設に、世界で初めてカメラが潜入したドキュメンタリー作品です。
 今年の2月にNHK-BSで短縮版が放映され、話題になっていました。
 福島原発放射能汚染の事故が起き、この映画が渋谷で緊急公開されました。
 いつも行く新百合ヶ丘ワーナーマイカルでも、2週間のみ緊急公開が決まり、観てきました。

ポスター


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100,000年後の安全」のHPは、こちらです。


監督:マイケル・マドセン
脚本:マイケル・マドセン
脚本:イェスパー・バーグマン
撮影:ヘイキ・ファーム
編集:ダニエル・デンシック

出演者:T・アイカ
    C・R・ブロケンハイム
    M・イェンセン
    B・ルンドクヴィスト
    W・パイレ、E・ロウコラ
    S・サヴォリンネ
    T・セッパラ
    P・ヴィキベリ


配給:アップリンク

2009年製作
上映時間79分
デンマークフィンランドスウェーデン、イタリア


監督 マイケル・マドセンのプロフィール(HPより転載)

1971年生まれ。映画監督、コンセプチュアル・アーティスト。
ストリンドベリの「ダマスカスへ」をベースに、都市と景観を上空から撮影した映像作品「To Damascus」(2005)のほか、何本かのドキュメンタリー作品を監督。
また、コペンハーゲンのタウンホール広場の地下にある、面積900平方メートルのサウンド・ディフージョン・システムを備えたギャラリー「Sound/Gallery」の創始者及び、芸術監督を務める(1996-2001)。
ニューミュージック&サウンドアート・フェスティバル SPOR 2007のデザインやデンマークのオーデンセの音楽図書館のコンセプトを考案。
また、ゲストスピーカーとして、デンマーク王立芸術学校、デンマーク映画学校、デンマークデザイン学校で講演している。

誰にも保証できない十万年後の安全。放射線廃棄物の埋蔵をめぐって、未来の地球の安全を問いかけるドキュメンタリー


 毎日、世界中のいたるところで原子力発電所から出される大量の高レベル放射性廃棄物が暫定的な集積所に蓄えられている。
 その集積所は自然災害、人災、および社会的変化の影響を受けやすいため、地層処分という方法が発案された。

 フィンランドのオルキルオトでは世界初の高レベル放射性廃棄物の永久地層処分場の建設が決定。
 固い岩を削って作られる地下都市のようなその巨大システムは、10万年間保持されるように設計されるという。

 廃棄物が一定量に達すると施設は封鎖され、二度と開けられることはない。
 しかし、誰がそれを保障できるだろうか。
 10万年後、そこに暮らす人々に、危険性を確実に警告できる方法はあるだろうか。
 彼らはそれを私たちの時代の遺跡や墓、宝物が隠されている場所だと思うかもしれない。
 そもそも、未来の彼らは私たちの言語や記号を理解するのだろうか。

 未来の人々に、語りかけるようなナレーション。
 場面ごとに暗闇の中でマッチを擦り、ほのかな光の中に浮き上がる監督から問いかけられるメッセージ。
 SF映画のように美しい施設の映像美と、フィンランドの厳しい自然の映像。
 一場面一場面に、観客に問いかけ、自ら考えさせる映画です。

 これから原発は必要なのか。
 今までに出来てしまい、安全な物質になるまで十万年かかる放射線廃棄物の処理をどうすればよいのか。
 フィンランドの方法が正しいのか、地震が多発する日本ではどうすればよいのか。
 
 深く考えなければならない問題を問いかける、凄いドキュメンタリー映画でした。