「膚(はだえ)の下」(上・下)、読了しました
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「あなたの魂に安らぎあれ」・「帝王の殻」に続く三部作の完結編です。 上巻592頁、下巻630頁。2冊あわせて厚さ5cmにもなる長編です。 1作目「あなたの魂に安らぎあれ」が、早川書房SFノヴェルズで1983年1月に刊行。 2作目「帝王の殻」が、中央公論社から1990年2月に刊行。 本書が早川書房から単行本で刊行されたのは、2004年4月なので、実に21年目にしての完結編です。 火星シリーズといわれていますが、火星が舞台になるのは、2作目の「帝王の殻」のみです。 時系列順には三部作は逆順に書かれていて、「膚の下」は発端のお話です。「あなたの魂に安らぎあれ」で謎だったことが、いろいろ解明されています。 そしてこの作品のラストシーンでは「あな魂」のおよそ五十年後となっています。 1作目・2作目に登場するUNAGの梶野少佐や、2作目に登場する機械人アミシャダイ。 波沙空洞都市や、門倉京などのキーワードが出てきて、どのようにラストに集約されるのか… ワクワクしながらラストまで飽きることなく読みきれました。 1作・2作と読み返してから本作を読んだのが、より効果的だったのでしょうね。 主人公はアートルーパーの慧慈(けいじ)。 アートルーパーとは、人間が地球を離れて火星で250年の冬眠をするあいだ、地球を復興する機械人を管理するために作られた人造人間です。 慧慈は地球残留を希望して軍と交戦している一派の鎮圧に借り出され、身体にも精神にも傷を受けます。 機械人のアミシャダイに助けられ、機械人の特殊な思考を知った慧慈は、アートルーパーという新しい種族なのだという自覚を得て、自分が何をなすべきなのかに迷い悩むようになります。 そして、人造犬サンクや、アートルーパーの仲間たち。そして、さまざまな人間との出会いと別れが、慧慈を成長させていきます。 月戦争で破滅に瀕した人類は、人間以外が存在しない、荒廃した未来を作ろうとします。 それに対して、慧慈は多種多様な生物が存在する未来を作る為に、「造物主」になることを決意します。その道が「茨の道」であることを自覚しながら… この作品を読んで、一番好きな一文を、忘れないように書いておこうと思います。 「ああ、こうゆうことなんだな、と慧慈は思った。こういう願いを一つひとつ叶えていくこと、叶えられるということ、それが生きてるということなのだな、と。生きていくということは、ほんの些細な願いの積み重ねで成り立っているものなのだ……」
さて、次は「海賊課」シリーズでも再読するとしましょうかね~